銅版画(Charcographie)


●アクアチント(Aquatint)-腐蝕法-

銅版の上に細かい松脂の粉を布に包んで振りかけたり、あるいはアクアチント

ボックスという箱の中に版を置き、空中に舞い上がらせた粉を降らせる。版を

温めると、松脂粉が溶けて付着する。これを腐蝕液につけると、粉が着いてい

ない部分が腐蝕されて、無数の点が凸状に残される。明暗の階調を出したい部

分があれば、その上に防蝕剤(アスファルトと蜜ロウと松脂を混合したもの)

を段階的に塗って腐蝕の時間を変えれば、自由に濃淡を表現可能。     


●エッチング(Etching)-腐蝕法-

銅版に防蝕剤(アスファルトと蜜ロウと松脂を混合したもの)を引き、その上

から先のとがったニードルで引っかくように線を描く。防蝕剤が剥がれた部分

だけ銅が露出し、腐蝕液に入れると、そこだけが線状のくぼみとなる。腐蝕が

終わると、防蝕剤を取り去り、凹部にインクをつめ、余分なインクを拭き取っ

た後でプレス機にかけて刷る。                     


●シュガー・アクアチント(Sugar Aquatint)-腐蝕法-

砂糖の飽和溶液にアラビアゴムを混ぜたものを筆につけて、直接銅版の上に描

く。そのまま乾燥させてから、全面に防蝕剤(アスファルトと蜜ロウと松脂を

混合したもの)をひく。乾いた後に版を微温湯につけると、溶液で描いた部分

が溶け、防蝕剤は持ち上げられ剥がし取られてしまう。その後、エッチングと

同様に腐蝕する。砂糖液の代わりに墨汁などが使われる事もある。     


●ドライポイント(Drypoint)-直接法-

先端が鋭く尖った鋼鉄の針で、銅板に直接絵を刻み込む。刻線のまわりに「ま

くれ」ができる。この「まくれ」を生かすように自由に絵を描くと、刷られた

線には独特のにじみができる。この「まくれ」は、耐久性が無い為、沢山のエ

ディションを刷る事が出来ない。                    


●メゾチント(Mezzotint)-直接法-

19世紀の中ごろ一度無くなった技法であるが、長谷川潔によって現代に蘇っ

た技法である。その為に、現在でもこれといった道具が無く、オリジナルの道

具を使っている作家が多い。銅版を削ったり、磨いたりして原版を製作する。


阿部出版(株)の版画年鑑を基に解説しています。